現在日本では、小児ウ蝕罹患率の低下、8020達成者の増加が達成されつつあり、その一方で、口腔ケアと全身の関係に着目したエビデンスが多数報告されています。歯が無ければ、味覚に異常があれば、そしてドライマウスになれば、食欲もわかず、十分な栄養も取れず、その結果筋肉量が減り、動けなくなるというロジックが成り立つようです。今後、超高齢者社会における、各ライフステージに対する切れ目の無い歯科医療になることが望まれていると言えるでしょう。つまり、疾病に陥ったもののみを対象に治療してきた健康型歯科医療から地域完結型歯科医療による健康寿命達成に寄与する歯科医療に成る日が近いと考えられます。「守る歯科(予防)の中の治す歯科(治療・再生医療)」と言えます。その為に、医療連携の重要性が浮かび上がり、より多くの勉強が必要となっていることも間違い有りません。
さて、世界保健機構(WHO)の健康の定義は「単に疾病や虚弱でないばかりでなく、身体的、精神的、社会的に完全な安寧な状態」とあります。具体的に言えば、「食欲があり、風邪を引かず、ひどく疲れず、良く眠れる人」が健康な人で、病気ではないと解釈できるでしょう。換言すれば、口腔を奇麗に保つことが、予防することが健康と大きな関係があるとWHOも認めていると言えます。
とはいえ、無くなった歯や歯周組織を再生医療で治療することも予防に並び今後の重要なポイントで有ることは間違いないようです。実際、実験的に歯は作れるようになり、インプラント周囲に機能的歯根膜を作ることもできるようになりました。最近ではiPS細胞の応用に目を見張るものがあり、歯髄細胞の応用も注目されています。再生医療が成り立てば、平均寿命は100歳を超える日も夢ではないと考えられています。
今回は講演の機会を与えて頂、明るい未来の歯科医療について話せたら、そして患者さんが、楽しく食べて、元気に過ごして頂き、PPK(ピンピンキラリン)とソフトランディングエイジングを迎えることに歯科医療が貢献できることを御理解頂ければ幸いと思っています。よろしくお願い致します。