平成26年度第2回生涯研修講習会

 

 

  【日 時】平成26年12月6日(土) 午後3時~5時30分

  【場 所】東京ベイプラザホテル  木更津市新田2-2-1  ℡0438-25-8888

  【演 題】居宅療養管理指導と日常診療に必要な「歯科栄養学」

        ―歯科医師法第22条の実践のために―

  【講 師】花田 信弘 先生

        鶴見大学歯学部探索歯学講座教授

 

歯科医師の居宅療養管理指導は、計画的な医学的管理に基づき、指定居宅介護支援事業者その他の者に対する情報提供又は留意点、介護方法等についての指導及び助言を行うものである。これまでの研究で、高齢者は口腔の虚弱化(口腔フレイル)に伴い、特定の栄養の摂取不足が起きることが知られている。具体的には、非でんぷん多糖(食物繊維)、タンパク質、カルシウム、非ヘム鉄、ナイアシン、ビタミンCと野菜や果糖および乳糖の1日の摂取量の低下である。居宅療養管理指導では、口腔保健だけでなく個別の状況により不足しがちな栄養素について指導及び助言する必要がある。

 一方、歯科医院では、来院患者に対する個別の保健指導が必要である。例えば、齲蝕はエネルギーのもととなる三大栄養素(タンパク質、脂質、炭水化物)のバランスが炭水化物(糖類、糖質)に偏った結果である。このような患者は、タンパク質低栄養に陥っている可能性が高く、齲蝕治療後にタンパク質摂取の食事指導をしなければ、老年医学で問題になっている筋肉量の減少(サルコペニア)、高齢者虚弱(フレイル)に陥る可能性がある。歯周病治療により来院された患者に対しては、五大栄養素における、タンパク質、ミネラルとビタミンの不足を指摘する必要がある。WHOの紀要では、低栄養が歯周病を悪化させること、抗酸化物質(ビタミンC、ベータカロチンとビタミンE)は、歯周病の予防因子であることが記載されている。

 歯科医師法では第22条に「歯科医師は、診療をしたときは、本人又はその保護者に対し、療養の方法その他保健の向上に必要な事項の指導をしなければならない。」ことが明記されている。これまで体系的な学問として存在しなかった「歯科栄養学」を発展させ、居宅療養管理指導と日常診療に必要な歯科医師による保健指導の充実を図ることが大切である。

 

略歴

1953年福岡県生まれ、公立大学法人九州歯科大学歯学部卒業、同大学院博士課程修了。

九州歯科大学助手・講師、米国ノースウェスタン大学医学部研究員、岩手医科大学助教授を経て

1993年  厚生労働省 国立感染症研究所部長

2002年   厚生労働省 国立保健医療科学院部長

2008年  鶴見大学歯学部教授となり現在に至る

この間、健康日本21計画策定委員、九州大学大学院教授併任、東京医科歯科大学グローバルCOE講師に就任。

現在、内閣府消費者委員会委員、日本歯科医学会学術委員会副委員長、日本口腔衛生学会学術担当理事、東京理科大学客員教授および日本歯科大学客員教授を併任。

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